所報7月号
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13コラム このたびの東日本大震災は、東北地方を中心に未曽有の被害をもたらした。亡くなられた方々には深甚の哀悼を、被災された方々には心よりお見舞いを申し上げます。 「百年に一度」の金融危機の出口がようやく見えつつあったところへ、今度は「千年に一度」の大津波に見舞われ、日本経済はまた閉塞状態から脱する機会を失った。バブル崩壊以来、失われた10年が20年になり、さらに30年になるとすれば、中小企業はたまったものではない。日本の企業数はおよそ500万社だが、その99・7%は中小企業である。そこが「元気」を取り戻さない限り、日本経済の復活はあり得ない。 今回の大震災は多くのことを教えてくれた。その第一は、経済のグローバル化を目に見える形で示してくれたことである。東北のサプライチェーン(供給体制)がストップするや、日本のみならず世界中が生産の停滞を余儀なくされた。その好例は自動車産業である。自動車の部品は3万点ともいわれ、部品会社の数は7000社にも及ぶ。その一部でもストップしたら、自動車の製造ラインは動かない。つまり、東北の部品会社はグローバル経済の中にしっかりと組み込まれていたのである。 このグローバル化の現実は、中小企業にとっては希望と言っていい。オンリー・ワンの部品や製品、技術さえあれば、世界中から買い手が殺到するからである。しかも、宣伝や営業マンを世界中に配することもない。インターネットで流せばいい。すでにそういう時代に入ったのである。 間もなく東北の復旧・復興が始まる。その震災特需は中小企業にとってチャンスと言っていい。何のためらいもうしろめたさも感ずることはない。目いっぱい生産し供給することが、東北の復旧・復興の支援になるのだから。そしてそのことが内需の拡大につながり、日本の宿痾(しゅくあ)たるデフレ脱却につながるならば一石二鳥である。 1930年東京生まれ。日本大学卒。55年に玩具メーカーを設立。急成長を遂げたものの、ドルショックと放漫経営がたたり77年に倒産。翌78年「倒産者の会」設立を呼び掛け「八起会」を起こす。「倒産110番(03―3835―9510)」を中心に、再起・整理・人生相談まで無料奉仕。著書に『修羅場の人間学』(東洋経済新報社)、『こんな社長が会社をつぶす!』(日本実業出版社)、『幸せをあきらめない』(致知出版社)、『家族の力』(祥伝社新書)など。野 口 誠 一(のぐち・せいいち)「 震 災 特 需 」八起会 会 長 野 口 誠 一COLUMNコ ラ ム

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