所報5月号
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日本銀行 松山支店長 白塚重典 氏 日本銀行は、明治時代(1882年)に設立され、今年で130周年を迎えます。松山支店も開設から80周年という節目に当たります。日銀は日本の中央銀行として、通貨を発行する「発券銀行」、税金など国庫金の出納を行う「政府の銀行」、民間金融機関との取引を行う「銀行の銀行」という3つの役割を有しています。そして、こうした銀行業務を通じて、「物価の安定」と「金融システムの安定」という政策目標を追及しています。日銀の中期経営計画では、「安定的かつ効率的な業務の遂行」、「学習とそれを踏まえた実践」、「開かれた組織」の3つを経営指針―貴行について教えてください。開設から130年…物価・金融システムの安定を目指すとしています。また、日銀の支店は、中央銀行と地域経済の接点としての役割も担っています。 昨年の東日本大震災は、地震や津波による直接的な被害だけではなく、自動車の生産などでサプライチェーン障害を生じさせ、経済に大きな影響を与えました。また、ヨーロッパの財政危機や円高など、グローバルな金融・経済環境も悪化したことから、日本経済は厳しい状況にありました。今年に入ってからは、円高の修正が進み、震災の復興需要も徐々に本格化しています。また、先行きは、グローバル経済も新興国を中心に持ち直しの方向に進むとみていますので、今年度の半ばぐらいには、日本経済は改善の動きがもう少し明確になっていくのではないでしょうか。 愛媛県内は、全体として横ばいの動きとなっています。個人消費は、乗用車販売の好調や大型小売店販売の持ち直しなど底堅く推移していますが、企業の生産活動には一部、弱めの動きが残っています。今後は、全国的な動きに連動し、県内経済も改善傾向へ向かうことが期待されます。―経済動向はどのように捉えられていますか。日本経済は改善の動きが明確に…県内経済の連動を期待 日本経済は、バブル崩壊後、失われた10年といわれるように、長期にわたり経済活動が停滞し、デフレ傾向が続いています。経済面から考えると、若干プラスのインフレ(物価上昇)率が望ましいという認識は世界共通です。デフレ脱却のため、通貨の供給量をどんどん増やせば良いと指摘されることがあります。しかし、実際の金融経済はどうでしょうか。実は、日本のお金の量は増加しています。日銀が供給している通貨の量をバランスシートの大きさでみると、名目GDPの3割程度に達しています。15年ほど前は名目GDPの1割程度でしたので、お金の量自体は大きく増加しています。また、銀行預金などもう少し広い意味での通貨量を集計したマネーストック統計をみると、この10年間、年率2%程度のペースで着実に増えています。問題は、この増加した通貨が必ずしも有効に使われていないことにあります。つまり、デフレの本質的な原因は、お金の量が不足していることではなく、お金のめぐり方が悪いことです。お金を人の血液に例えれば、血液の量が足りないのではなく、流れの悪いところがあるため、健康を害している状況です。―震災だけではなく、長引くデフレにより地域経済は疲弊しています。お金の量ではなくめぐり方がデフレの原因この人に聞くこの人に聞く2

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