所報8月号
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坂本 光司/さかもと・こうじ1947年東京生まれ。福井県立大学教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2008年4月より法政大学大学院政策創造研究科(地域づくり大学院)教授、同静岡サテライトキャンパス長および同イノベーション・マネジメント研究科兼担教授。他に、国や県、市町、商工会議所などの審議会・委員会の委員を多数兼務している。専門は中小企業経営論・地域経済論・産業論。著書に『日本でいちばん大切にしたい会社』(あさ出版)、『この会社はなぜ快進撃が続くのか』(かんき出版)など。法政大学大学院政策創造研究科 教授 坂本光司快進撃企業に学べ流行や景気を追わず、地道な経営を続けるまちのふとん店vol.05ムセンターや総合スーパーマーケットの攻勢により廃業や低業績にあえぐなか、同社は逆 徳島市に、「高橋ふとん店」という社名の各種インナーウエアを販売する小売店がある。 主たる商品は、ふとん・まくら・毛布・ベッド・カーペット・こたつ布団などで、大半の商品はヨーロッパやアジアの国々からの輸入だが、一部はこれらの国々に生産を委託した商品もある。 同社の創業は今から45年前の昭和42年、現社長の父が始めた。当初は、各職場を訪問し商品を持ち込み販売する「職域販売」だったが、まじめな言動が顧客の支持を受け、49年には18坪の自前の店を構えてスタートした。 その後も「損得より善悪で考える」「お客さまが先、利益は後」といった行動指針で、流行や景気を追わず、地道な経営を続けてきた。 多くの「ふとん店」がホーに創業以来、増収を続けている。ちなみに、現在の売上高は約40億円、社員数は110人、店舗も地元徳島県内に3店舗、香川県内に2店舗と、全国チェーン店を除けば、今や業界最大規模の「まちのふとん店」にまで成長・発展している。 40年以上も右肩上がりの成長発展を続ける要因は多々あるが、とりわけ特筆すべきは以下の4点と思われる。 第1点は、全社員を雇用者ではなく「共に社会貢献する仲間」と評価・位置付けし、全員参加経営・超ガラス張り経営を貫いてきたこと。 第2点は、社員とその家族に「入社して良かった」と言われたり、社員が世間から「良い会社で働いていますね」と言われたりするような、「社員のための良い会社づくり」に愚直一途に取り組んできたこと。 第3点は、自社の経営効率ではなく、豊富な品ぞろえや多めの在庫など、常に顧客の利便性を優先した経営を行ってきたこと。 第4点は、インターネットが普及するや、いち早くその研究と導入に取り組んできたこと。ちなみに、現在の同社の売上高に占めるネット販売の比率は約50%、しかもその多くは東京圏だ。 こうして見ると、元気の無い多くの小売商店が主張する「問題は外にある」「問題は大型店舗」といった見方・考え方は、説得力に欠ける、と言わざるを得ないだろう。コラムコラム16

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