所報11月号
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戦後、日本においては「産」と「学」は切り離された存在でした。20年ほど前から、アメリカのシリコンバレーのようなモデルを構築しようと、日本でも産学連携の必要性が謳われるようになりました。しかし、全国レベルで相当な「金」と「人」が投入されたにも関わらず、目立った成果があがったとは言い難い状況にあります。その20年間、日本はバブル崩壊を経験し、未だ長期低落の中から脱することができません。国の富や人材が流出し、国内市場は少子高齢化や人口減少により縮小しています。国際競争力も低下し、10年後には日本という国が潰れてしまうのではないかという危惧すらあります。その中で、山中iPS細胞がノーベル賞を受賞するという明るい話題がありましたが、日本が国際競争力を有している分野の一つが学術分野と言えます。閉塞感が漂う日本経済を打破するために 愛媛大学は、6学部7研究科を有し1万人の学生を擁する四国最大の総合大学です。研究面では、特に優れたものに集中投資するというスタンスから、沿岸環境科学や無細胞生命科学工学、地球深部ダイナミクスや宇宙進化など7つの研究センターを設置し、世界の最先端となる研究を行っています。私学も含めた科学研究費の獲得ランキングは全国20位程度です。また、教育に関しても力を入れており、文部科学省から西日本の教職員能力開発拠点に認定されています。さらに、四国で最も国際化の進んだ大学であり、300人以上の留学生が在籍しています。このように多くの文化、多様な価値観が触れ合う中、「学生中心の大学」「地域にあって輝く大学」「地域から世界に発信する大学」「世界に貢献する大学」という4つの柱をもとに活動を展開しています。 研究や教育に止まらず、産学及び地域との連携を両輪とした地域密着型の役割を果たす大学を創造するため、地域とのインターフェースとして位置付けている組織が、社会連携推進機構です。平成6年に開設された地域共同研究センターを端緒として、現在は7つのセンターと室があり、専任教員30名、客員教授35名、職員36名、さらに私のような兼任者を合わせて、100名以上のスタッフが、地域社会との連携に携わっています。具体的には、地域の文化やまちづくりなどの地域連携事業を担う地域創成研究センター、産業界との共同研究を推し進める産学連携推進センター、特許などに携わる知的財産センター、行政や地域と連携した極めて実践的な防災研究を行う防災情報研究センター、さらには、第一次産業が盛んな南予地区に拠点を置く、南予水産研究センターや植物工場研究センターがあり、幅広い分野で社会連携に取り組んでいます。併せて、社会連携企画室を設置し、専任のコーディネーターが共同研究やプロジェクトの構築を推進しています。この体制を見ても分かりますが、愛媛大学は今まさに地域を向き、社会連携へ積極的に取り組んでいます。「産学連携で国際競争力を 強化し日本の未来を描く」~愛媛にある最先端の研究・情報・ネットワークのフル活用を~国立大学法人愛媛大学 理事・副学長 社会連携推進機構長矢田部 龍一 氏―愛媛大学について教えてください。研究・教育・国際化の面において西日本有数の大学―機構長を担われている社会連携推進機構とは・・・100名以上のスタッフが産学及び地域との連携に従事―「産」と「学」の連携による可能性は・・・産学連携で長期低迷する日本経済を打破この人に聞くこの人に聞く2

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