所報10月号
18/28

坂本 光司/さかもと・こうじ1947年東京生まれ。福井県立大学教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2008年4月より法政大学大学院政策創造研究科(地域づくり大学院)教授、同静岡サテライトキャンパス長および同イノベーション・マネジメント研究科兼担教授。他に、国や県、市町、商工会議所などの審議会・委員会の委員を多数兼務している。専門は中小企業経営論・地域経済論・産業論。著書に『日本でいちばん大切にしたい会社』(あさ出版)、『この会社はなぜ快進撃が続くのか』(かんき出版)など。法政大学大学院政策創造研究科 教授 坂本光司快進撃企業に学べ業績は快進撃なのである。 ともあれ、こうした障がいがある人の平均をはるかに上回る給料を払うことができるのは、同社の創業者であり経営者である小川行治さんの経営が正しかったからである。小川さんは、たまたま出会った障がいがある人々に普通の給料を払うため、創業当初から価格ではなく非価格で勝負しようと考えた。つまり、市場ニーズのある「他社がやらない・やれない・面倒な仕事」にターゲットを絞り込み、徐々に市場を創造していったのだ。 より具体的に言えば、クリーニング業では珍しい徹底した手作業、24時間・365日サービス、そして商品の授受を顧客とのハンドトゥハンドで行ってきたのである。もちろん、その中心は同社の障がいがある社員たちである。 こうしたビジネス展開は、ホテルやレストランはもとより、その利用客やスポーツ選手・芸能人などからも口コミで評判が伝わってゆき、業務用とはいえ、今やかなりの顧客が、これら顔の見える個人客である。 先日、機会があって同社を訪問させていただいたが、洗濯する人、染み抜きをする人、アイロンがけをする人など、職場は活気に満ち満ちていた。ちなみに、洗濯後の乾燥は、なんと乾燥機ではな 博多駅から車で20分くらい走った福岡市東区に「プラスアルファ」という社名の中小企業がある。主事業は業務用クリーニングを行うサービス業で、従業員数は20人である。こう言うと、全国どこにでもある中小のクリーニング業と勘違いされそうであるが、同社の実態は大いに異なる。 というのは、20人のうち13人は障がいがある人で、その雇用率はなんと65%である。ちなみに、わが国企業(従業員数50人以上)の平均雇用率は、いまだ1・7%程度であることを考えると、注目に値する中小企業なのである。加えて言えば、その大半は正規社員としての雇用であり、賃金も月給ベースで14万円から20万円という。作業所などで働く障がいがある人の平均工賃が月額1・5万円から数万円であることを考えても、いかに同社の給料が抜きんでて高いかがよく分かる。それでいて、そのく、自然の風と扇風機を活用していた。 障がいがある社員が、なぜこうも質の高い仕事をこなすことができるのかを尋ねたところ、ほぼ全員が同社の社員が特別支援学校で行う出前講座の受講生であり、社内で積極的に行っている就業体験の参加者であるという。つまり、頑張る障がいがある人にとって、同社は憧れの会社なのである。障がいがある人の雇用に積極的に取り組む『有限会社プラスアルファ』vol.17コラムコラム16

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です