所報5月号
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坂本 光司/さかもと・こうじ1947年生まれ。福井県立大学教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2008年4月より法政大学大学院政策創造研究科(地域づくり大学院)教授、同静岡サテライトキャンパス長および同イノベーション・マネジメント研究科兼担教授。他に、国や県、市町、商工会議所などの審議会・委員会の委員を多数兼務している。専門は中小企業経営論・地域経済論・産業論。著書に『日本でいちばん大切にしたい会社』(あさ出版)、『この会社はなぜ快進撃が続くのか』(かんき出版)など。法政大学大学院政策創造研究科 教授 坂本光司快進撃企業に学べなんと9800万円である。加えて言えば、役員はもとより社員の中に親族は一人もいないという変わった会社である。 ともあれ、業界の大半の企業が業績低迷に嘆き悲しむ中、同社は逆に快進撃を持続している。それでは、なぜ同社は好不況にほとんどぶれず快進撃を続けてこられたのか。その最大の要因は、二宮社長が実行してきた経営学が、社員はもとより顧客から高く支持されてきたからに他ならない。 二宮社長が進めてきた経営の基本的考え方は「社員とその家族が幸せになる会社」づくりである。このことを経営者が一番大切にせずに社員が顧客に良いサービスを提供できるはずがないと考え、創業以来、社員とその家族のためになると思うことを、愚直一途に次から次に実行してきたのである。 前述した社員の持ち株制度の導入や、経営の超ガラス張り・全社員参加経営はもとより、定年制を廃止し、行き過ぎた成果主義をとらず、年功序列の賃金制度をベースとしている。また、販売面でも値引きは一切しない、飛び込み営業はしない、大口ではなく小口を大切にする、お客さまにとって一番良いことをするなどを基本としている。このため職場内にギスギス感はまったくなく、社員の士気はすこぶる高い。 二宮社長をこうした社員最重視の経 JR東海道線の大船駅から車で15分ほど走った横浜市栄区の住宅街に「株式会社さくら住宅」という社名の住宅のリフォーム会社がある。創業は平成9年、現在地近くに生まれた現社長の二宮生憲さんが51歳のとき、住宅関連のある会社をあえて辞め、仲間数人でスタートしている。 業績はすこぶる順調で、創業以来一度も赤字経営をしたことがないばかりか、1年を除き増収増益である。 ちなみに社員への賞与は業績を反映し年間4回、月数で約6カ月支給しているという。同社の経営でとりわけ驚くのは、社員全員(入社1年以内を除く)が持株会ではなく個人の株主という点である。しかも二宮社長の持ち分はわずか20%、残りは社員と顧客が株主である。配当も5・5%ということもあって人気があり、現在、株主はなんと157人もいるという。この結果、社員数はパートを含め44人ながら資本金は営に駆り立てたきっかけは、サラリーマン時代の経験である。住宅関連のある上場会社の取締役まで登りつめた努力家であるが、上司だった社長の親族重視・公私混同甚だしい経営を反面教師にしたのである。 こうした企業の存在を見せつけられると、経営問題の全ては経営者の背中と心にかかっていると言える。社員最重視の経営を貫く『さくら住宅』vol.22コラムコラム16

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