所報2月号
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坂本 光司/さかもと・こうじ1947年生まれ。福井県立大学教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2008年4月より法政大学大学院政策創造研究科(地域づくり大学院)教授、同静岡サテライトキャンパス長および同イノベーション・マネジメント研究科兼担教授。他に、国や県、市町、商工会議所などの審議会・委員会の委員を多数兼務している。専門は中小企業経営論・地域経済論・産業論。著書に『日本でいちばん大切にしたい会社』(あさ出版)、『この会社はなぜ快進撃が続くのか』(かんき出版)など。法政大学大学院政策創造研究科 教授 坂本光司快進撃企業に学べ述べる。第1の要因は同社のリサイクルへの徹底した取り組みである。地球環境への配慮や、100%のリサイクルを企業使命と捉え、創業以来一丸となって取り組んできている。こうした努力が実り、現在では廃車から発生するごみを埋め立てることは一切せず、廃車のリサイクル率は実質100%だという。 第2の要因は顧客満足度が極めて高いことである。持ち込まれる廃車や中古車は業者ではなく、一般ユーザーからだ。このため、営業日は年末年始やお盆・祝日を除く毎日で、しかも営業時間は7時30分〜19時である。このため社員の勤務は早番・遅番があり、同業他社よりあえて社員数を多く配員することにより社員の負担も軽減している。 顧客満足度を高める方策で、最も驚かされるのは、購入した廃車・中古車のその後を、1台ずつ売り手に連絡しているのである。売り手はその報告を聞いて「自分が長年乗っていた愛車が、まだ人々の役に立っている」と知り、涙声で電話連絡してくる人も多いという。 そして、第3の要因は、社会貢献活動である。車の解体業というと、迷惑施設的に捉えられがちであるが、同社は地域の教育機関や自治会からも高い評価を得ている。それもそのはず、地域住民に手を差し伸べる活動を積極的に行っているばかりか、子どもや学生などへの環境教育のために、工場を常にオープンにしているのだ。 宮崎市の中心部から車で15分ほど走った未だ田園風景の残る場所に「久保田オートパーツ」という企業がある。主事業は自動車の解体や自動車のリサイクル部品の国内外への販売、さらには自動車の販売や車検業務なども行っている。まさに自動車のことなら「ワンストップ企業」である。こうしたこともあり、工場の敷地は極めて広く、現在使用している場所だけでも1万1000坪。いわゆる自動車の解体を業とする企業は全国に約5000社あるが、同社は業界のモデル企業の1社だといわれている。 同社の創業は、今からおよそ40年前の1975年、現社長の父である久保田茂氏(現相談役)が25歳のとき、脱サラし、スタートしている。誠実な人柄と、努力のかいあって、現在では売上高は約10億円、社員数は約50人に達している。また、業績も抜群で、その信用力は格付け機関からも高く評価されている。 同社が高い評価を受けている要因は多々あるが、ここでは3点に絞って 3K(きつい、汚い、危険)・5K(3Kに暗い、臭いを加えたもの)的業種でありながら、同社の工場・敷地内は3S(整理、整頓、清掃)・5S(3Sに清潔、しつけを加えたもの)が行き届いている。なお、昨年当社を見学に訪れた学生や社会人はなんと3000人を超すという。自動車のことなら何でもお任せ『久保田オートパーツ』vol.29コラムコラム16

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