所報3月号
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2月23日、表記のテーマにて議員研修会を開催しました。その内容を誌上講演会としてお届けします。「最近の金融経済情勢について」~ アベノミクスと地方創生を考える ~日本銀行松山支店 支店長 下田 知行 氏 足許の景気を見ると、企業収益の面では最高益を更新する企業は多数にのぼり、上場企業全体の収益でみても2015年3月期はバブル期やリーマンショック前を超えて過去最高となる可能性が高いとみています。株価も高値圏で堅調に推移しているほか、原油安も日本のようにほぼ全量輸入に頼る消費国にとっては大きなメリットとなります。今春以降そのメリットはさらに実感されるものになっていくでしょう。また、賃金も緩やかに回復する一方、物価は昨年5月をピークに徐々に前年比の上昇幅を縮小しており、実質賃金は改善方向に向かっています。こうした様々な好材料は、日本経済全体のパイは拡大方向にあることを示していますが、こうした好材料にもかかわらず、景気回復の実感が伴っていないことも事実です。これは、経済のパイ拡大のメリットが大企業・製造業や株式保有者など富裕層に偏っていること、それまで内税表示であった小売店の多くが外税表示になるなか、8%の消費税が改めて意識され、マインドの慎重化を招いたこと、本来は過去に実施されるはずであった年金支給額の調整が先送りされた結果、消費税率の引き上げと過去分の調整の実施が重なり実質でみて年金額が4%程度引き下げられたこともあってシニア層の財布の紐も締められたこと、などが原因と考えられます。 10-12月期の実質GDPはプラス成長となりましたが、個人消費や設備投資は横ばい圏内と依然回復力は物足りない状況です。日本銀行が1月21日に公表した政策委員会のメンバーの景気の先行き見通しをみると、2014年度は下方修正された一方、2015年度は、2・1%と高めの成長を見込んでいます。これには、前述したとおり、原油安のメリットが今後一層明確に出てくることも一因です。原油安が景気に与えるインパクトについては様々な推計がありますが、例えば、貿易収支の改善を7兆円程度と見込む推計もあります。日本の名目GDPは約500兆円ですから、この原油安による貿易収支の改善だけで経済成長を約1・4%引き上げる力があります。また、日本銀行は現在、消費者物価指数でみて2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現し、デフレ脱却を確実にするため、「量的・質的金融緩和」を実施している訳ですが、原油安のメリットがさらに明確になれば、景気回復による経済の体温の上昇がみられるうえに、これまで物価の押し下げ要因になっている原油価格と景気好材料の割に回復力の弱い景気誌上講演会2

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