所報4月号
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坂本 光司/さかもと・こうじ1947年生まれ。福井県立大学教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2008年4月より法政大学大学院政策創造研究科(地域づくり大学院)教授、同静岡サテライトキャンパス長および同イノベーション・マネジメント研究科兼担教授。ほかに、国や県、市町、商工会議所などの審議会・委員会の委員を多数兼務している。専門は中小企業経営論・地域経済論・産業論。著書に『日本でいちばん大切にしたい会社』(あさ出版)、『この会社はなぜ快進撃が続くのか』(かんき出版)など。法政大学大学院政策創造研究科 教授 坂本光司快進撃企業に学べ当初は「イケイケどんどん」の経営であった。しかし私が2008年に書いた『日本でいちばん大切にしたい会社』を読み、業績重視の経営を改め、社員とその家族第一主義経営に方向転換したと白柳社長は言う。同社の快進撃の始まりは、その方向転換と時を同じくする。 同社が現在まで実施している社員と、その家族のための愛情あふれる独自の福利厚生制度は30以上に及ぶ。今回は、そのうちの一つ「家族の誕生日や命日などの特別休暇制度」を紹介する。 この制度は「家族」という名の通り同居している・いないは問わず、両親・配偶者・子どもの誕生日や、その命日に法定有給休暇とは別に、特別休暇を付与する制度だ。この制度を活用すれば、社員一人当たり、少なくみても6日程度は特別休暇が取得できる。 とはいえ、制度があっても活用されなくては意味がないので、同社では、これまで雰囲気づくりに注力するとともに、全社員が持っている経営計画書(手帳サイズ)のカレンダーの欄に、全社員の特別休暇を記載している。そればかりか、数日前に、総務や上司が該当する社員に休むよう指示しているという徹底ぶりだ。 こうした努力があいまって、今や社員の取得率はほぼ100%という。白柳社長は、「大切な家族の大切な日に 企業経営の使命と責任は、企業に関わる人々の幸せを追求・実現することだ。関係者の中でもとりわけ重要な人は「社員」と「その家族」である。 それもそのはず、社員が心身ともに健康な状態で、仕事に専心するためには、何よりも家族の支えが必要だからだ。それゆえに、社員のみならず、その家族に対しても愛情のこもった福利厚生制度の充実・強化は重要といえるだろう。 こうした面で参考になる企業の一つが本社を八王子市に置く「エイト」という社名(社名も八王子市に由来するという)の中堅企業だ。同社の主事業は、不動産、建物総合管理、建築・土木・造園、さらにはマンションなどの管理だ。創業は今から28年前の1988年。現経営者である白柳雅文氏が、仲間と一緒に不動産業をスタートさせた。 この間の努力と苦労が実り、今や非正規社員を含め全社員数は760人という企業にまで成長している。創業休暇をとり、家族と一緒に過ごすことで、家族の絆は一層深く、強くなる。社員みんなが喜んでくれているので、今後もこの制度は継続していきたい」とニコニコ顔で語ってくれた。社員と家族の絆をより強くし、快進撃を強くする『エイト』vol.42コラムコラム16

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