所報2月号
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 表紙絵の温泉地を巡る本コラム。今回は、松山市の権現温泉である。権現町は、松山市の北側に位置する街で、周りを山に囲まれている。権現という地名の由来は、八坂熊野神社が創建されたことに因るものと伝わっている。権現町の町誌には、八坂熊野大権現宮之伝記の引用があり、この地域を「『権現邑』と号す」とある。神社の創建は728年となっており、古い歴史を持つ地名と街であることがわかる。八坂熊野神社は、今も権現町の丘の上にあり、境内からは、権現の街を一望することができる。 温泉に関しても町誌によると、大正の初期、自然湧出していたものを、高橋浅蔵氏、高橋義一氏らが発見し、共同浴場を設置したことに始まる。浴場開設は、大正13設備も改善して、当時は福角字友国の里付近であったことから「友国温泉」と呼ばれていた。その後、昭和30年頃には、松山市が国の協力を得てボーリングに成功し、権現温泉観光株式会社が発足。温泉開発ブームにものり、前道後とも呼ばれるようになり、温泉客で賑わうこととなった。表紙絵の温泉は、松山市権現町670に立地しており、営業時間は午前10時から午後11時で、毎月第四木年9月30日。その後、増湯し曜が定休。入浴料は大人600円、宿泊もできる。 また、権現町は、四国八十八ヶ所の太山寺や円明寺に近く、その疲れを癒すため、温泉を訪れるお遍路さんも多い。大正時代までは、権現の青年は、数名から十名のグループで、四国八十八ヶ所を巡拝することが慣例となっていたとのことで、その後の温泉のおもてなし文化にもつながっているようだ。また、街には権現観音堂をはじめ、その歴史を今に伝えるものが数多く残っており、神仏への信仰も厚い。 権現温泉は、春にかけて、満開の桜を見ることができる場所が多い。松山の歴史を訪ねながら、風光明媚な自然の中で湯につかり、日ごろの疲れを癒したい。19コラム第2回「権現町 権現温泉」「権現町 権現温泉」古い歴史を有する権現町に湧く温泉

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