リレーコラム 第22回大変革チャンス「ラジオの逆襲が始まる」チェンジの時代にを掴む5コラム 松山商工会議所情報・サービス業部会部会長 今年は大正14年3月22日(1925年)にNHKのラジオ放送が始まって100年の節目の年である。 この頃、全国のラジオ受信機数を伸ばすためのソフト開発として生まれたのがラジオドラマで「500円ドラマ」が誕生している。当時の土地付き新築住宅が500円の時代に。凄いお金をかけてエンターテインメントを開発していったのだ。おかげでラジオ受信機は一気に普及した。 戦後でいえば昭和27年から29年にかけて菊田一夫原作の「君の名は」が大人気を集める。私の両親はそのころ結婚した。月給6000円の高校教師は新婚家庭で初めての贅沢をして2万円のラジオを月賦で買ったらしい。 しかし、昭和30年代のテレビの出現でラジオや全盛期を迎えていた映画は、娯楽の主人公から陥落する。「もう映画・ラジオの時代は終わった・・」と訳知り顔の評論家は述べたものだ。今も同じようなことを耳にしないか?「テレビ離れが始まっている」「テレビの時代は終わりネットの時代が来た」・・とか。 その頃ラジオはまず深夜放送に活路を見出した。DJが紹介するフォークソングや自由なお喋りが若者文化と時代を牽引していった。ちなみに、私は昭和52年にラジオドラマを創りたくて南海放送に入社した。面接で志望動機を話したら役員たちに笑われた。「田中君、テレビの時代だよ」と。 ラジオの特性をご存じだろうか。人間の命が尽きる最後の最後まで聴力は残ると言われている。幼少期に親や先生に褒められたり叱られたりした「言葉」はずっと残っている。恩師の顔は忘れても、言葉は脳に深く刻まれている。音声メディアのそれが一番の特性だ。”心の襞にずっと寄り添うメディア“それはテレビやネット映像とは全く違う効果や力を持っている。とすると、そもそも同じ土俵でビジネスをやるのはおかしいのではないか。 全盛期の2600億円から1300億円に半減したラジオ市場だが、私はあきらめてはいない。スマートフォンにインストールする「ラジコ」という新しい武器を得たラジオの逆襲がこれから始まるのだと、このチャンスに目を細めている。田中和彦イメージ
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